お仕事見学
図書館をトータルサポートする株式会社図書館流通センターを訪問! (後編)
第7回 株式会社図書館流通センター
ウパっちは、とある企業図書室に住むウーパールーパー。
図書室のおじさんが持っていた『週刊新刊全点案内』という本に興味を持って、発行元の株式会社図書館流通センター(TRC)にやってきました。
前編では広報部の尾園さんの案内でTRCという会社のことをいろいろと教えてもらい、後編ではいよいよ『週刊新刊全点案内』に掲載されているデータを作成しているデータ部を案内してもらいます!
データ部の仕事
データ部に所属する土屋さんに、データ部の業務について説明してもらった。
データ部を案内してくれた土屋さん
「TRCでは、出版物の書誌情報のデータを作成していますが、その作業を実際に担当しているのが、データ部という部署です」
「出版される数日前に、取次からデータを作成する本の実物を借り受け、それを見ながら書誌情報のデータを作成しています。このデータは、TRC MARCに収録される他、毎週発行される『週刊新刊全点案内』に掲載されます」
「ここがデータ部で、100名ほどが在席しています。そのうち6割ほどはパートさんなのですが、10年以上勤めてくださっているベテランが多く在籍しています」
ほとんど仕切りのない広いフロアで、たくさんの人がパソコンに向かい、作業をしている。
「比較的女性が多いですかね。作業は分担制で、さまざまな作業担当者を経由して1つのデータができあがります」
ICタグで管理
実際の作業の流れに従って、土屋さんに作業内容を教えていただいた。
「まずは、1冊1冊の本にTRC MARCナンバーというIDを付与します。このTRC MARCナンバーをICタグに登録して、そのICタグの付いたカードを本に挟み込みます。各自のパソコンにはICタグリーダーが装着されているので、ICタグリーダーに本を載せるだけで作成されたデータを呼び出し、すぐにデータを編集することができるようになっています」
壁面の棚にもICタグリーダーが設置されている
「ICタグの付いたカードは、5色に色分けされています。『週刊新刊全点案内』は毎週発行するので、1週間以内にデータを作成しないといけません。それで月曜日から金曜日の各曜日で色分けをすることで、ICタグを読まなくても、後何日で作業しなければいけないかが一目でわかるようにしています」
色分けされたカード
表紙の撮影
「TRC MARCナンバーを付与したら、表紙画像を撮影します。撮影を行なう暗室にはデジタルカメラがセットされており、表紙の上にガラス板を置いた状態で撮影されます」
横に置かれたコインにもちゃんと役割がある
「表紙を撮影する場合は、本のカバー(ジャケット)はそのままで、オビだけをはずして撮影しているんですが、忙しくなるとオビをしたまま撮影してしまったりすることもあって、そういう場合は撮り直しになります」
「オビといえば、最近、カバーが二重になっているものがありまして、例えばドラマとか映画の宣伝用のが付いていたりして、中の方のカバーで撮影しないとダメだったりとか、いろいろ苦労もあります(笑)」
なかにはCD-ROMやDVD-ROMが付いているようなムック本もあり、こうした本の場合、撮影時に表紙が歪んでしまうため、コインを使って高さ調節をしているそう。
「撮影された画像はすぐパソコンに取り込んで確認し、トリミングなどの修正を行なって登録します」
書誌情報の入力
書誌情報の登録作業は、入力する項目によって、それぞれ担当する班が分かれている。
「入力する書誌情報には、出版物のタイトルや著者名、出版社、ISBNなどの基本情報の他に、分類(主題をコードで表したもの。日本十進分類法の8版と9版)、件名(内容をあらわすキーワード)があり、それぞれの作業担当者が入力しています」
登録作業で使い込まれた参考資料
データの中には、TRC独自の項目もあり、例えば「ジャンル」という項目は1084種類から指定できて、しかも階層構造になっている。分類だけだと913.6で「日本の小説」となるが、「ジャンル」では、SFやファンタジー、時代小説という具合にさらに細分化されているため、図書館でのレファレンス等にも活用されているそうだ。
「他にも、児童書向けに学習件名や読み物キーワードという項目があります。学習件名とは、児童向けのノンフィクションの本で1ページ以上にわたって記述されている内容についてキーワードを入力したもので、調べ学習に有効です」
「読み物キーワードは、児童向けのフィクションや絵本に対して入力された、キーワードやテーマのことです。こちらもタイトルからはわからない本を探すことができます」
日本十進分類法の中にはあちこちに書き込みがある
「著者名は専門の班で典拠データベースを作成しています。これは例えば同姓同名の著者がいる場合に、同じ人なのか別の人なのかわかるようにするためのものです。典拠データベースがあることで、同じ人が書いた別の本を検索することができますし、複数のペンネームを使い分けている著者に対して別のペンネームで出版された本を参照することもできます」
「その他、内容紹介も作成しています。児童書の場合はさらに子供向けの児童用内容紹介も作成しています。この内容紹介は、『週刊新刊全点案内』にも表紙画像と一緒に使われるので、決められた文字数で簡潔にまとめないといけないので、大変なところです」
児童向けの内容紹介の場合、利用対象によって習っていない漢字があったりするため、作業で使用しているシステムではそうした漢字がすぐわかるようになっているなど、入力作業を補助するツールも充実している。
「最後に、目次情報のデータベース化も行っています。短編集・論文集・アンソロジーなど1冊に複数の作品を含む「内容細目ファイル」と呼ばれるデータベースと、専門書・楽譜・児童書ノンフィクションなどの「目次情報」のデータベースです」
データの校正作業
「多くの作業担当者の手を経て作成された書誌情報のデータですが、最後に校正作業が行われます。校正作業では、目録情報とこれまで入力されてきた件名や典拠情報その他の内容を、実際に本と照らし合わせながら確認します」
「このチェック作業は何度も行います。カード目録の形に印字してのチェックや、ヨミや巻次など特定の項目を複数冊分並べて比較チェックするなど、いろいろな角度から校正作業を行っています。使用しているシステムもチェック作業が行いやすいよう、項目の抽出や並び替えなど自由に操作ができるようになっています」
データが作成されるまでには、本当に多くのスタッフの手を経由している。
効率よく作業するために
「TRCに届く出版物は、およそ1日に300冊、多い時は500冊ほどになります。これらは全て見本で、借りてから3~4日後には返却を行わなくてはいけないので、限られた時間の中で効率よく作業しなくてはいけません。円滑に作業が進んで締め切りに間に合うよう、入力項目が多い児童書から作業にとりかかるなど、スタッフは自発的に動いていますね」
「新刊の情報だけではなく、既刊の出版物のデータ更新も行っています。特に受賞記録や新聞の書評掲載記録などは、情報を随時入力して、TRC MARCへ反映させているんですよ。『週刊新刊全点案内』にも「書評に載った本」コーナーがあり、図書館の方々にも見ていただけているようです」
「月末や年度末など時期によって出版点数は異なるのですが、『週刊新刊全点案内』の発行日は火曜日と決まっています。大変な時もあるのですが1週間分の出版物の情報を遅れることなくお届けできるように作業をしています」
ウパっちと記念撮影
書籍消毒機(前編を参照)できれいにしてもらって上機嫌のウパっちは、帰りの電車で考えていました。
TRCでは、毎日たくさん発行される出版物の中から図書館がそのニーズに合った出版物を探しやすいように、何度も校正を繰り返して誤りのないデータを日々作り続けている。
『週刊新刊全点案内』を作る舞台裏は、予想以上に大変な作業だった。
でも、「手間のかかる本から積極的に取り組んでいる」と話してくれたスタッフの方の笑顔には、仕事に対する責任感があふれていて、ホントにかっこよかったな。
会社情報
- 株式会社図書館流通センター
- 株式会社図書館流通センター(TRC)
http://www.trc.co.jp/