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専門図書館見学記

紙の博物館 図書室

掲載:2024年9月12日
図書館名
紙の博物館 図書室
住所
〒114-0002 東京都北区王子1-1-3(飛鳥山公園内)
URL
https://www.papermuseum.jp
電話番号
(03)3916-2320

紙の博物館って?

紙の博物館は、4万点の資料と1.5万点の図書を展示公開している、世界でも数少ない紙専門の総合博物館です。「紙の歴史をたどり、現在を知り、未来を考える」という理念のもと、日本の伝統的な「和紙」と、近代の発展を支えた「洋紙」の両面から、紙の歴史・文化・産業について紹介しています。

日本の洋紙発祥の地である王子に立地しており、2020年には創立70年を迎えた、歴史ある博物館です。旧王子製紙の工場内にあった「紙業史料室」を母体としており、第二次世界大戦で焼け残った資料をもとに、図書のみならず、さまざまな紙づくりの原料・道具・機械・図面、製紙業界の記念品などを収蔵しています。飛鳥山公園に移転したのは1998年のことで、隣接する北区飛鳥山博物館、渋沢史料館とともに「飛鳥山3つの博物館」となりました。また、2007年には、所蔵物が経産省から近代化産業遺産群の構成遺産に認定されています。

館内には、近代製紙産業に関する記念碑や、実際に工場で使用されていた機械やその模型、紙について体験的に学ぶことのできるクイズコーナーなど、趣向を凝らした展示がたくさんあります。所蔵されているコレクションの中には、刊行年代の明らかな現存する最古の印刷物のひとつである陀羅尼(だらに)と、それを納めた木製の百万塔(ひゃくまんとう)、1,303回摺り重ねた世界最大級の木版画「孔雀明王像」などの貴重な資料を見ることができます。土日には、牛乳パックを再生した原料から手すきのオリジナルはがきやしおりを作る「紙すき教室」も行っているそうです。

紙の博物館図書室

今回は、紙の博物館に併設されている図書室にお伺いしました。

図書室の入り口のそばには、明治9年に操業した京都府営製紙工場で昭和20年まで使用された工場の門扉など、貴重な産業遺産コレクションがならんでいました。

この展示を抜けた奥に、図書室の入り口があります。

紙・パルプ・製紙業・和紙およびその周辺分野の図書・雑誌・業界新聞を所蔵している専門図書館であり、一般に公開された、博物館が設置する図書館(ミュージアムライブラリー)です。現在は、博物館の学芸部に所属する専任司書1名によって管理されています。

「周辺分野」といっても印刷や紙幣、伝統工芸、おもちゃ、折り紙などジャンルは多岐にわたるため、レファレンスを意識して取捨選択しつつ、歴史や技術についての解説のある図書を中心に収集しているとのことです。

企画展やイベントなどの博物館の活動にあわせた図書リストを発行することもあります。

また、特別コレクションとして、紙パルプ技術の向上と製紙業の発展に尽力した関義城(セキヨシクニ,1892~1979)氏が収集した図書資料、およそ3,200点を「関義城文庫」として、収蔵庫に所蔵しているそうです(※収蔵庫は、一般の立ち入りはできません)。

図書とひとくちにいっても、博物館で活用される展示資料(江戸時代の文書など、コレクションとして展示し鑑賞するための図書)と、図書室で活用される調査資料(実際に調べるための図書)の線引きが難しく、どこまでを図書室で管理するべきか迷ってしまうこともある、という現場のお声も聴くことができました。博物館と協同して運営されている、ミュージアムライブラリーだからこそのお悩みでした。

手漉き和紙や印刷用紙の見本帖も図書室に置かれていて、実際に手に取って閲覧することができたのが、印象に残っています。

普段はなかなか見ることのない業界新聞もならんでいます。

資料の分類は基本的にNDC(日本十進分類法)を採用しており、「紙・パルプ・和紙」関連の図書(NDC585番台)は独自分類でさらに詳細に分けて管理しているとのことです。

提供サービスとしては、図書室にある開架資料は当日閲覧利用することができますが、収蔵庫等の閉架資料については事前予約が必要です。著作権法の許す範囲内で複写も可能で、相互複写(ILL)や郵送複写にも対応しています。レファレンス(読書案内・調査相談)も受け付けており、紙に関する図書・雑誌についての質問や資料の探し方、所蔵状況の確認などの相談のほか、博物館の収蔵品に関する質問がくることもあるそうです。

人とともに、図書室も変わる

お話を伺っている中で特に興味深かったのは、図書室の利用者の変化です。

初めは、紙にかかわる分野の研究をしている方の継続的な利用が主だったそうですが、2017年頃から始めた夏休みイベントによって利用者が増え、今では子供連れの一見さんが多く入館するようになったといいます。

図書室を入ってまず目につく正面の棚には、小学生の自由研究にも役立つような資料の展示コーナーがあり、こうした企画やSNSでの広報などをとおした、司書さんや関係するスタッフさんの熱心な取り組みが実を結んでいるのだと感じました。

紙の歴史や文化に興味のある方はもちろん、夏休みの自由研究などに悩むことがあれば、訪ねてみてはいかがでしょうか。

見学者
吉村香織(株式会社ブレインテック Jcross担当)
見学した専門図書館
紙の博物館 図書室