カツ
輝望閃詩ダクシオン
昨年(2019年)の図書館総合展で開催された図書館キャラクター・グランプリの会場で、ひときわ異彩を放つ戦隊ヒーローのようなキャラクター、輝望閃詩(きぼうせんし)ダクシオンに出会いました。
少し「ゆるめ」のキャラクターも集まる図書館総合展の会場で、近くで見ても本物の戦隊ヒーローのような変身スーツに身を包んだダクシオンとは一体何者?輝望閃詩って?
おそるおそる話しかけてみると、ふだんはこのヒーロースーツ姿で、図書館のおはなし会などに登場するのだそうです。図書館のおはなし会でヒーローショーをするのでしょうか?
そのインパクトの強い姿が忘れられなかった私たちは、2月のある日、那珂市立図書館(茨城県)で開催されるイベントにダクシオンがやってくると聞いて、謎に包まれた仮面の裏側を探るべく、Jcrossのマスコットキャラクターであるウパっちと一緒に図書館を訪ねました。
- 名称
- 輝望閃詩(きぼうせんし) ダクシオン
- プロフィール
- 古より受け継がれし「閃詩の書」に選ばれた、本好きの青年「エイチ・マモル」が本開(変身)する、現代の輝望閃詩。本を無くし、世界中を無知・無関心にしようとする「インディグノ帝国」から、人々と知を守るために活動しながら、左胸の本棚から抜けた「失われた1冊」を探し、全国を旅している。
- 活動内容
- 「ヒーローお話し会」「絵本ヒーローショー 」「ヒーローベルトワークショップ 」などで全国の図書館に現れる。
- https://www.facebook.com/Ducsionproject/
- @ducsion
- YouTube
- https://www.youtube.com/channel/UCYCUCwNsjYWzvvCB99l1NwA
ダクシオンに会える「ヒーローおはなし会」
那珂市立図書館
雲ひとつない快晴のなか、那珂市立図書館に到着すると、入口にはイベントの告知ポスターが貼られています。図書館総合展の会場にも置かれていたダクシオンの大きなパネルがあり、期待が高まります。
ヒーローおはなし会が始まるまでにはまだ時間がありましたが、会場を覗いてみると、スタッフの方がリハーサルの真っ最中でした。中央にいる後ろ姿の男性はもしかして変身前のダクシオン...?!
もっと舞台裏を覗き見していたい気持ちを抑え、イベント開始までもう少し待ちます。
イベント開始直前、会場は2才から小学校低学年くらいまでの数十人の子どもたちとその保護者でほぼ満席になりました。そして、いよいよおはなし会がスタート。
「ダクシオーン!!」という子どもたちの呼び声にこたえ「♪ダダダダクシオン...」というテーマソングにのってダクシオンが登場すると、子どもたちの雰囲気がそれまでとは変わりました。待ってましたとばかりに嬉しそうだったり、見たことのない姿にちょっと不安そうだったり、表情は様々でしたが、子どもたちの視線はダクシオンに釘付け。
そんな中、まずはダクシオン自身による絵本の読み聞かせが始まりました。目を輝かせた子どもたちとは違い、「あのマスクをかぶったままでよく文字が読めるなあ」などとつまらないことに感心してしまいます。
読み聞かせの合間には、手遊びで子どもも保護者も一緒に手や体を動かし、皆とても楽しそうでした。
終盤、ダクシオンが子どもたちに話しながら、武器「図書剣」を取り出すシーンでは、この「どこかでみたことある感」に、この時ばかりは大人たちが大笑い。子ども向けのイベントなのに、保護者向けの仕掛けまで用意されていました。
おはなし会のあとも大サービス
おはなし会には、参加した証としてもらえる、スタンプカードなども用意されていました。大人でも、もらうとちょっとワクワクするようなカッコいいカードです。子どもたちは、最初はこれにスタンプを押してもらうことが目的かもしれませんが、何度も通っているうちに図書館の楽しさを覚えていくことでしょう。
また、おはなし会の会場の隅には、ダクシオンへのお便りコーナーも。お便りを書いた子どもには、バースデーレターが届くのだそうです。まだ字の書けない年頃の子も、保護者の方に手伝ってもらいながら、「わたしのすきなえほんは〇〇です」「ダクシオンかっこよかったです」といったメッセージや絵を一生懸命描いていました。
ウパっちにもバースデーレターが届くかな?
最後は、参加した子どもたちひとりずつ、ダクシオンと一緒に記念撮影タイム。子どもたちだけではなくお父さんやお母さんたちも一緒にポーズを決めて撮ったポラロイド写真は、この後でダクシオン自らメッセージを書き込んで手渡してくれました。
最後には、図書館のボランティアスタッフの皆さんも一緒に決めポーズ!
ヒーローおはなし会が終わった後も、図書館のカウンターに場所を移して、ダクシオンが本の貸出や記念撮影に応じてくれます。おはなし会に参加していた小さな子どもたちだけでなく、遠くで様子をうかがっていた中学生くらいの男の子が、少し恥ずかしそうにしながらダクシオンと一緒に写真を撮ってもらい、嬉しそうだったのが印象的でした。
カウンターで本を手渡すダクシオン
近づいてくる子どもたちがいなくなるまでずっと、キレのある動きを披露しながらカウンターに立っていたダクシオンは、最後も颯爽とバックヤードに去っていき、これで本当にイベントは全て終了。
最初は、図書館のスタッフが行うおはなし会の中でヒーロー役として登場するだけかと思っていた私たちは、ダクシオンの至れり尽くせりのサービスに驚いてばかりでした。
イベントが終わった後の控室でインタビュー
ヒーローおはなし会のあと、私たちはイベントの控室を訪ねました。長時間ヒーロースーツに身を包んでイベントを終えたばかりなのに、ダクシオンは疲れた様子もなく、爽やかに私たちを迎えてくれました。ヒーロースーツを脱いだ姿もご紹介したいところだったのですが、今回はこの姿のままでダクシオンとしての活動についてお聞きしました。
サービス満点のおはなし会でした。こうした活動を始めたのはいつ頃からですか?
ダクシオン本格的にこうしたイベントなどで活動し始めたのは昨年2018年の5月頃からです。仙台での活動が中心でしたが、縁あって昨年(2019年)の図書館総合展に出ることになり、同じころから活動の地域を広げ始めました。
今日のようなイベントは、図書館から声がかかるのですか?それともダクシオンさんから?
ダクシオンどちらもありますが、今回は私から茨城県内の図書館にFAXを一斉に送った時に、那珂市立図書館さんが興味をもって連絡をくれたのがきっかけです。
自ら営業活動(?)をされているとは驚きました。今日、図書館までお一人で来られたと伺い、それも驚きだったのですけれど。てっきり付き人のような方がいるのかと思っていました。
ダクシオンそんなことはないです(笑)。今、主に行っている活動は、この「ヒーローおはなし会」と「ヒーローショー」で、ヒーローショーの時は敵役も必要なので助っ人を頼みますが、おはなし会の時はほとんど一人ですね。全部ひとりでやります(笑)
最近は町おこしイベントなどで活躍するご当地ヒーローもたくさんいますが、図書館の世界でこうした活動をしようと思ったのはどうしてですか?
ダクシオン子どものころからずっと、いわゆる戦隊ものが大好きでした。今、全国に色々な戦隊もののキャラクターがいますが、地域ごとのキャラクターだったり、特定の企業のキャラクターだったりというのがほとんどです。でも、そういう形ではなく、自分は「図書館」というジャンル全体で活動したかった。少なくとも活動を始めた時点では、他にそういう「ジャンル」で活動するキャラクターはいなかったと思います。
たしかに、そういわれてみると類するものが思い浮かびません。
ダクシオンマスクを通して、この姿だから言える言葉もあります。ヒーローおはなし会では、ただ読み聞かせをするだけでなく、図書館を利用することや本を読むことの楽しさも伝えていますが、ヒーローであるダクシオンの言う言葉だから、子どもたちは「〇〇しようね」「〇〇しちゃだめだよ」というメッセージをすごく真剣に受け止めてくれます。さらに、会場の後ろのほうにいる大人たちも、それをうなずきながら聞いてくれます。
幅広い世代が、何かしらの戦隊ヒーローものを見て育っているでしょうから、大人も子どもも、すぐにあの独特の世界観の中に入りこむことができるのかもしれませんね。
ダクシオンそうだと思います。時にはあえて子どもじゃなくて大人に向けて話すこともあります。「図書剣」なんて、子どもにはわからない(笑)。
「子どもにどう本を読んであげたらいいかわからない」というお母さんの声や「子どもたちにもっと図書館を利用してもらいたい」という図書館のお悩みなどを聞くことがありますが、ダクシオンの活動を通して、子どもたちに本を読む楽しさや図書館を利用する楽しさを伝えながら、大人も楽しませたい、巻き込みたいと思ってます。
子どもたちが本や図書館を好きになってくれれば、お父さんお母さんも嬉しい、図書館の人も嬉しい。みんなが幸せになるということですね。正直なところ、図書館とヒーロー、最初は奇妙な組み合わせだと思ったのですが、その意外性にこそ、老若男女みんなを楽しませる力が潜んでいるのかもしれませんね。
ダクシオンそう、遊び心があることはとても大事です。そうした魅力のあるもの・場所に人は自然と集まってきますよね。図書館の中の人たちは、いつもとても真面目に頑張っていると思うけれど、遊び心のあるアプローチも必要だと思います。きっと、そういうやり方のほうが成果も出ると思うから、もっと自分たちが楽しんでほしい!
ダクシオンの秘密が、ちょっと理解できたような気がします。きっと、これからたくさんの図書館からお声がかかるようになるのではないでしょうか。
ダクシオンそうなるといいですね。活動をしていく中で、ダクシオンの世界観も成長してきました。エイチ・マモルとダクシオンにも、これから新しい展開があるかもしれません。
左胸の本棚から「失われた1冊」が見つかるのでしょうか?!そうしたら、ヒーロースーツの姿も変わったりして?!…楽しみです。もし、この記事を読んだ図書館の方がダクシオンに来てほしい、と思ったら、どうすればいいですか?
ダクシオンSNSのプロフィールなどから電話やメッセージをもらえればと思います。
最後に、ずっと気になっていたことを聞いてもいいでしょうか?
ダクシオンなんでしょう…?(笑)
ダクシオンのスーツは、胸のところが本棚になっていたり、色々本をモチーフにしたデザインがありますが、全部で何冊の本が搭載(?)されているのでしょうか。
ダクシオンえーと...1,2,3…(数え始めるダクシオン)
なるほど!そこも本の形になってるんですね...12,13,14...(一緒に数えるJcrossスタッフ)
さて、一体何冊の本が隠れていたのか。
興味のある方はぜひダクシオンに会いに行って確かめてくださいね。
文/関乃里子 (株式会社ブレインテック Jcross担当)