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専門図書館見学記

国立研究開発法人 海洋研究開発機構 横浜研究所図書館

掲載:2017年1月6日
図書館名
国立研究開発法人 海洋研究開発機構 横浜研究所図書館
住所
神奈川県横浜市金沢区昭和町3173番25
URL
http://www.jamstec.go.jp/j/pr/library/

JAMSTEC

35年間長崎県の公立中学校教員をしていた山本みづほです。国語科教員であるとともに、学校図書館を司書教諭として切り盛りしていた図書館人。早期退職後、地球上のさまざまな図書館を巡礼中です。

今回の巡礼先である海洋研究開発機構(JAMSTEC、ジャムステック)は、海と地球の研究所で、全国に五つの研究拠点があります。北から、青森、神奈川(横浜と横須賀)、高知、沖縄で、今回は横浜研究所を訪問しました。

シンボルマークは建物にも見られる青い波ですが、同行者の一人は「海を研究しているのにシンボルマークは山なのね!」と。確かに富士山に見えないこともないのですが。

建物の外観

中に入るとまず楽しいグッズが目に留まり、バンダナ、布バッグ、ペーパークラフト、文房具と値段も手ごろで、思わず買い物に走ったのでした。ここで一気に「海洋研究開発機構」という堅い字面のイメージは払しょくされました。

深海の不思議な生物を楽しく紹介する子ども目線の展示が楽しくて(展示内容は随時更新されます。2016年12月現在は、ギャラリーにて「地球環境写真展」を開催しています)、大人でもわくわくする仕掛けになっています。地球型の大スクリーンで見る海流の映像には、しばし見とれてしまいました。

海流の映像

2005年7月に完成したという地球深部探査船「ちきゅう」の模型を見た私は、びっくり。

地球深部探査船「ちきゅう」の模型

「ちきゅう」は、佐世保重工業(SSK)にドック入りすることもあるので、親しみのある船なのです。船底から掘削用のやぐら(デリック)の突端までの高さが130m(33階建てビルの高さ)で、夜になると煌々とそのデリックに明かりが灯り、最初は港に輝くその姿に、「あれは何だ?」とみんな驚きました。次からは「お帰り」という気持ちで眺めるようになり、佐世保市民は「ちきゅう」のドック入りを楽しみに待っています。

図書館

さて、それでは本題の図書館に行きましょう。図書館のある3階のエレベーター横の表示も海抜で表され、この建物が常に海を意識していることが分かります。

海抜11.5mであることを示す看板

この図書館に直雇用の司書が着任して8年目となります。図書館業務の主目的は、所属する研究者・職員の業務支援ですが、横浜研究所図書館に一般開放エリアがあり、月1回の公開セミナーとその関連本の展示、子ども向けの展示にも力を入れています。地球科学全般を扱う専門図書館で、NDCの4、5類が蔵書のほとんどを占めます。科学分野の専門図書館の例にもれず、ここも図書館予算の8割は電子ジャーナルに充当され、どうしても冊子本の購入は少なくなります。内部には組織としての図書委員会があり、図書館の運営や資料の選定など、図書館業務全般について審議されています。また、図書館業務の特徴の一つとして、図書館所蔵資料の管理のみならず、機構内で購入される図書は(各部署で購入される図書も)すべて図書館に一旦納品されていることが挙げられます。登録装備ののち、貸出の形で各部署へ資料を届け、必要がなくなれば返却してもらい図書館で所蔵します。また、学術出版の編集委員会事務局も所掌しており、査読誌の出版業務を行っているところは特筆すべきことでしょう。

次世代を担う研究者の卵たちにもきちんと対応しようと、遠くから保護者に連れられてやって来る子どもたちへのサポートも万全です。1か月間の期限で、1人3冊の一般貸出も行っています。夏休みは、特に子どもたちの利用が多くなりますが、ていねいに対応している姿が図書館のさまざまな展示からも伺えます。近隣小学校の見学も快く受け入れ、開かれた専門図書館としての役割を果たしたいという姿勢には脱帽です。こんな場所で探求学習をすることができれば、子どもたちの可能性は無限に広がって行きそうです。

図書館内の様子

お土産に戴いた有人潜水調査船「しんかい6500」のペーパークラフトは、その作成の手順が英語併記されていて、こんなところにもこの機構の世界を視野に入れた志の高さが見えて、ちょっと感動しました。

有人潜水調査船「しんかい6500」のペーパークラフト

今年に入ってからも日本各地で頻繁に起きる地震や火山噴火。今、日本では地震や火山を専門とする学者が少ないと言われています。そのメカニズム、発生の素早い感知、地球環境変動の研究、そして海の観測、海底資源の探査、深海生物の研究。なくてはならない分野の研究を担う大勢の後継者を育成するためにも、この専門図書館に頑張ってほしいと、心からエールを送りながらこの場所を後にしました。

見学者
山本 みづほ
見学した専門図書館
国立研究開発法人 海洋研究開発機構 横浜研究所図書館