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専門図書館見学記

みどりの図書館 東京グリーンアーカイブス

掲載:2017年5月26日
図書館名
みどりの図書館 東京グリーンアーカイブス
住所
東京都千代田区日比谷公園1-5
URL
https://www.tokyo-park.or.jp/college/archives/

今回はJcrossスタッフが、昨年の第18回図書館総合展の図書館キャラクター・グランプリでブレインテック賞を贈ったご縁[]で、白百合女子大学図書館の図書館ピアサポーターLiLiA(リリア)のメンバーの皆さんと一緒に取材に伺ってきました。

みどりの図書館ってどんな図書館なんだろう?

東京都千代田区の南側に位置する東京のオアシス、日比谷公園。
その公園内に「みどりの図書館」という専門図書館があるのをご存知でしょうか。

日比谷公園は皇居からもほど近く、敷地内にはに日比谷公会堂、日比谷野音(日比谷公園大音楽堂)があり、コンサートなどで訪れたことのある人もいるのではない 周辺は官公庁が建ち並ぶオフィス街なので、平日のお昼時には休憩や日比谷公園内のレストランにランチで訪れる会社員も多く、週末には噴水広場を中心にフードフェスやチャリティーイベントなど、様々なテーマや団体のイベントが開催される場所でもあります。

今回ご紹介する「みどりの図書館 東京グリーンアーカイブス」(以下、「みどりの図書館」)は、厚生労働省、東京家庭裁判所に面した霞門から入ってすぐの場所です。

緑と水の市民カレッジの外観

「緑と水の市民カレッジ」という看板のある3階建ての建物の1階は「日比谷グリーンサロン」というレストランで、2階に上がると「みどりの図書館」があります。

3階は公園や庭園・緑地の歴史、自然環境等にかかわる展示や情報発信、ボランティア交流を行う「みどりのⓘプラザ」となっています。

東京都の緑、水辺に関する講座も開催しており、これらを「緑と水の市民カレッジ」と総称しています。

1階のエントランスでLiLiAのメンバーと待ち合わせ、2階の図書館に向かいました。

この日は公益財団法人東京都公園協会 公園事業部 緑と水の市民カレッジ事務局 広報普及係の大場由佳子係長と、田畑友里絵さんにご案内していただきました。

専門図書館に至るまで

みどりの図書館は都内の公園の維持管理や緑化推進、河川や水辺の保全等を行う公益財団法人東京都公園協会が運営しています。

その歴史は古く、昭和39(1964)年に開設された「東京都公園資料館」から始まります。

日比谷公園内に、公園緑地に関する資料を収集し公開するという目的の下スタートし、当初の資料数は約1万7千点だったそうです。

平成12(2000)年に「緑と水の市民カレッジ」を開校し、それに合わせて「緑の資料室」という名称になります。

移転や名称変更を経て、その間に所蔵資料点数は6万点まで増え、これらの資料を整理・保存・活用するために、平成16(2004)年東京都公園協会創立50周年記念事業として「東京グリーンアーカイブス」が設立されました。

その後、平成23(2011)年からは緑の専門図書館として「みどりの図書館 東京グリーンアーカイブス」となり、現在に至っています。

2階にある庭!?

館内に入り左手を見ると、窓際に並ぶ閲覧席の向こうにかわいらしい庭が見えます。

あれ?ここは2階じゃなかったっけ?と少し不思議な感覚に襲われます。

館内、窓際の閲覧席

こちらの庭は1階の屋根部分に作られた屋上庭園で、平成2(1990)年の建設当時は今ほど屋上庭園が盛んではなかったため、実験的な側面もあったのではないかということです。

建物の2階に位置するため、庭の向こうにちょうど日比谷公園内の樹々の上部が見え、緑がたくさん目に飛び込んできます。まさに「みどりの図書館だなぁ」と頷いてしまう光景です。

窓から見える庭に出ることはできず、あくまでも観賞用とのことですが、館内から日比谷公園内の四季の移ろいを見ることができます。

蔵書の特徴

書架に並んでいる蔵書のサインを見ると「02 08 都市計画行政」など、公共図書館などで使われている日本十進分類法とは違う分類を使用しているようです。

このあたりはLiLiAのメンバーも気になった様子で、担当者にさっそく質問していました。

これは、緑や環境、造園などに特化した蔵書構成のため、土木・建築関連、都市緑化など細分化した独自分類を採用しているということでした。

本の背ラベルの上2段がその分類を表し、3段目の番号は受け入れ順の連番だそうです。

書架の様子

専門書ばかりでなく、緑に関連するものであれば児童書や子ども向けの図鑑なども収集していて、週末や市民カレッジで開催される子ども向けの講座の後などには親子連れでの利用も多いそうです。

児童書コーナーへの案内図

公園で見つけた草花や昆虫をみどりの図書館で調べる小さな博士の様子を想像すると、微笑ましい気持ちになります。

日比谷公園で行われるイベントで人ごみに疲れたら癒しを求めて訪れるのもいいかもしれませんね。

カウンターに飾られた図面

カウンターの壁には大きな古めかしい図面の壁掛けが飾られています。

これは明治から大正にかけて活躍した造園家の長岡安平による、芝公園の設計図面の6分の1の縮図だそうです。

図面にある長方形の折り跡のようなものは紙を継ぎはぎした跡だそうで、当時は大きな図面を描くために何枚もの紙をつないで大きな用紙を作っていたそうです。

その大きさもさることながら、明治時代に描かれた図面は描写が繊細で、カラフルに色塗りされたところもあり美しいものでした。LiLiAの学生さんとカウンターのタペストリーを隅々まで眺めてしまいました。

カウンターの奥に飾られた図面のレプリカ

博物館のようなコレクション

現在は緑をキーワードにした図書や雑誌資料のほかに、昭和期を中心とした公園・庭園の写真や、明治期に作成された公園の図面、昭和初期の東京の公園パンフレット、記念発行された絵はがき、公園や東京の名勝を描いた錦絵なども収集保存し、所蔵数は約17万点にも及びます。

図面はトレーシングペーパー等の薄い紙に描かれたものが多いため、資料の扱いもとても慎重になります。

ものによっては劣化が生じているものがあるため、毎年枚数を決めて修復も行っているそうで、ここまでくると図書館というより博物館のような印象を受けます。

古い写真や図面などを保管する書庫は、1日1回スタッフが温度や湿度を確認して一定の環境を保っているそうです。

また、古いものを中心に図面や写真、絵はがきのデジタル化も行っていて、これらはインターネットで公開されています。

実際に書庫に入れていただき、昭和初期などに描かれた古い図面を見せてもらうと、手描きならではの緻密さと色彩の美しさに驚きます。

図面といっても現代のような無機質な線画ではなく、周囲に小さな樹々がたくさん書き込まれていたりしていてアート作品のようにも見えてきます。

図面の様子

図面の様子

古い図面は閲覧を希望された場合でも、基本的にはデジタル化したものを提供しているそうですが、描き直した跡を確認したいなどの要望を受けた場合は、現物を閲覧に提供しているそうです。

現物を見ることによって新事実が見つかることもあるそうで、そうした話を伺うとアーカイブの重要性や意義をあらためて実感します。 新たな発見に立ち会った時を想像すると、何だかわくわくしてきます。

所蔵資料の活用

館内の奥には「所蔵資料紹介コーナー」があります。

こちらでは普段は書庫で保存している貴重な資料をテーマに沿って公開しているとのことで、このときは「江戸のお花見」というテーマで展示が行なわれていました。

テーマ展示の様子「江戸のお花見」は2017年2月23日から4月22日まで開催

このような企画は年間を通じてテーマが設けられ、それに沿って市民カレッジの講座や、みどりのⓘプラザでの企画展、書籍の出版などが行なわれているとのことでした。

市民カレッジの講座教室は図書館施設の奥側にあり、講座の受講者は必ず図書館内を通って教室に入るため、講座内容に合わせた展示を行うと反響がとてもいいそうです。

こうした講座の受講者の他にも、学生や大学などの研究者、公園のガイドボランティア、マスコミ関連の方々の他に、都立公園の改修を行う際には、東京都の職員の方が過去の図面を閲覧しに来ることも多々あるそうです。

情報を発信し続ける図書館

3階の「みどりのⓘプラザ」では、みどりの図書館が所蔵する貴重な資料を活用した企画展示や、都立公園などで活躍するボランティアの活動内容などが紹介されています。

みどりのiプラザの入口

みどりのiプラザ内の様子

みどりのiプラザ内の様子

見学に行った時は、みどりの図書館で所蔵する資料を活用した「井の頭恩賜公園開園100周年記念展」が行われていました。

東京都公園協会では、みどりの図書館を運営すると同時に、みどりのⓘプラザ、市民カレッジの企画・運営と出版事業などを行い、様々な業務に収集されてきた資料が活用されていました。

これまでの大場係長の説明からは「東京都の公園・造園の歴史を伝承する」という強い使命感が感じられました。

LiLiAのメンバーから

取材が終わって、同行してくれたLiLiAのメンバーに感想を聞いてみました。

初めての専門図書館で緊張したが、想像していたより親しみやすい空間だった。

もっと早く知っていれば小学校の自由研究はもっと張り切れたのに。家の近くにもほしい!

緑や水、公園など、自然や都市についてよく考える良い機会となった。

貴重な資料も見せていただき充実した時間を過ごすことができた。

今回の取材中の様子

普段はなかなか目にすることのできない公園の設計図面の現物など、貴重な資料も閲覧させていただき、特定の主題について深追いする専門図書館の面白さをLiLiAの皆さんと一緒に体験できました。 

日比谷公園をぶらりとしながら四季折々の緑や自然に触れて、みどりの図書館で調べ物や読書というのも素敵な過ごし方なのではないでしょうか。

見学者
  • 秋葉 小夜子(Jcrossスタッフ)
  • 白百合女子大学図書館ピアサポーターLiLiA
見学した専門図書館
みどりの図書館 東京グリーンアーカイブス
※ 画像はJcrossのマスコットキャラクター「ウパっち」(左)と 図書館ピアサポーターLiLiAのマスコットキャラクター「ミス・リリアーヌ」(右)
今回、LiLiAのメンバーと共同で取材に伺った経緯や当日の様子などはスタッフブログでも紹介しています。あわせてご覧ください。
また、白百合女子大学図書館ピアサポーターLiLiAに関してはこちらの記事でも紹介しています。