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レポート

新春の港区を”巡りぶ”しました (後編)

掲載:2024年1月31日

2023年11月~2024年2月まで、東京都港区にある「港区立みなと図書館」と「港区内の専門図書館・博物館」が共同でスタンプラリーを開催しています。

先日、いくつかの図書館・博物館に訪問しました。その様子は前編をご覧ください。今回は、前回訪問できなかった館を回りたいと思います。

航空図書館

スタートは「航空図書館」です。こちらへは都営地下鉄三田線の内幸町駅が一番近いのですが、私はJR新橋駅のSL広場から歩くことにしました。日比谷公園へ向かう道すがらにある「航空会館」の6階に、航空図書館があります。

入口から中を見ると、床には滑走路柄のカーペットが敷かれていました。書かれている31という数字は方角を示しているとのことです。実際の滑走路にも方角を表す数字が書かれているとのことでした。

館内に入ると、機内誌や航空に関する雑誌、航空規定や統計資料が壁に沿って並んでいます。中央にある閲覧机の反対側には、製本雑誌の他、航空や宇宙などに関する読み物なども配架されていました。航空図書館が考証に協力した漫画も置いてありました。航空図書館は全国でも唯一の、航空宇宙に関わる専門図書館で、大正8年に帝国飛行協会に設けられた「飛行文庫」が前身だそうです。そのころの古い資料から現在まで引き続いて資料が収集されています。

こちらの図書館は入館時の入館票の記入だけで誰でも利用できます。私がお邪魔したときは、スタッフの人と相談しながら調べものをしている利用者がいました。

滑走路のカーペットの他、実際に機内で使用されていた椅子がおいてあったり、飛行機の模型が飾ってあったり、荷物を入れるロッカーのカギがスーツケースのネームタグを模していたり、開館時間案内板が空港で使われていた搭乗ボードのデザインを真似ていたり、と、細かなところで空港や機内を思い出させる館内でした。

このビルの屋上には「航空神社」があるとのことで、帰りがけにお参りしました。「空の安全=落ちない」ということから合格御守、「運気上昇」を祈願した飛翔守など御守の授与所や御朱印の案内もありました。

人権ライブラリー

この後で訪問したのが、「人権ライブラリー」です。前編でお邪魔した「東京都人権プラザ」の近くにあります。どちらも人権に関する専門図書館ですが、「東京都人権プラザ」は東京都が設置した人権啓発のための拠点施設で、「人権ライブラリー」は公益財団法人人権教育啓発推進センターが法務省の委託を受けて運営している図書館です。

人権ライブラリーでは、人権に関する本や視聴覚資料の他、地方公共団体が発行する啓発資料をたくさん所有しています。図書資料だけではなく、展示パネルや紙芝居といった資料も貸出しています。この貸出は郵送でも受け付けているとのことで遠方の方も利用されるそうです。

また、人権に関する研修会を企画・開催されているとのことで、入口にはたくさんの関連イベント案内が置かれていました。オンライン配信のセミナーも開催されているとのことなので、CSR(企業の社会的責任)を推進する立場になった人などにも頼れる存在なのではないかと思いました。

BICライブラリ

スタンプはあと2館分! 続いて訪れたのは、東京タワーの足元にある「BICライブラリ」です。BICライブラリは、機械産業を中心としたビジネス情報の提供を行っている専門図書館です。

カウンターでスタンプを押してもらってから、見学してきました。

昨年11月、BICライブラリ内に「くるまコレクション」ができました。ここにある資料は旧自動車図書館(日本自動車工業会)で所蔵していた資料です。自動車の型ごとの諸元の記録とともに保管されている写真、カタログ、統計資料、製本された雑誌など、様々な資料が旧自動車図書館で丁寧に管理されていましたが、BICライブラリが、これらの資料を散逸させないようにまとめて引き継いでいます。

公開してからおよそ2か月経過していますが、その間の利用者の動向から、書庫に置いていた雑誌の中でよく使われている雑誌を閲覧室に移動するなどの計画を立てているとのことでした。

こちらの図書館は平日月~金の開館ですが、館内には「OPEN DAY」として2024年2月10日(土)に特別開館すると掲示がありました。この近くにあり、同じく「巡りぶ」スタンプラリーに参加している三康図書館の見学会とちょうど同じ日に開館ということなので、二か所同時に回ることができそうです。

三康図書館

そして最後のスタンプは、BICライブラリから徒歩5分ほどの場所にある「三康図書館」です。

道路脇とビル入口には、それぞれ手書きのウェルカムボードが置いてあります。こういうボードがあると気楽に入ることができますね。

三康文化研究所附属図書館として仏教関連の資料を中心に収集されていますが、旧大橋図書館の膨大な蔵書を引き継ぎ発足した図書館のため、明治大正期の児童・成人向け国内出版物が書庫に保存されています。膨大な蔵書が保存されているこの書庫も、見学が可能です。

資料の表紙と解説文の入ったパネルが閲覧室内に表示されていました。こちらの図書館は資料のほとんどが書庫に保管されていて、スタッフに出してきてもらう方式です。蔵書検索のシステムもありますが、こうした解説パネルで具体的に資料が紹介されていると興味を持つ資料も見つかるので、ふらりと入った利用者にも利用してもらえそうだなと思いました。展示のパネルを見ると、児童書、教科書、工学などの印がつけられていて分野も多岐にわたっていることがわかりました。

窓側の書棚には「教職員の文芸誌 文芸広場」という展示が行われていました。これは1976年~1980年に刊行された同人誌で、雑誌「文學会」の同人雑誌評で言及された作品の掲載号を展示していました。

また、毎月異なるテーマで蔵書を紹介する展示をしているとのことでした。訪問した1月は「戦前の日記」の展示でした。書籍として刊行されている日記というものにピンとこなかったのですが、開いてみると比較的簡易な表現が使われているように思え、思わず立ち読みしてしまいました。2月も別の展示を計画中とのことでした。

三康図書館では、2024年2月10日(土)が特別開館日で、書庫見学会のツアーが予定されています。書庫内の資料群を解説付きで見学できるそうです。

”巡りぶ”企画インタビュー

巡りぶの主催者のうちの1館で、企画段階から関わってきた三康図書館の新屋さんに、今回の企画の経緯や狙いなどについてお聞きしました。

三康図書館 新屋朝貴氏

数回に分けて7つの館をとても楽しく巡りました。この企画が誕生した経緯を伺えますか?

新屋もともとは、私たち港区内の専門図書館の関係者と公共図書館の関係者が、あるイベントで知り合って「いつか何か図書館同士の連携企画ができたら…」と話すようになったところから始まっています。最初に実現したのは、利用者向けの企画ではなくスタッフ同士の交流からでした。三田図書館で、港区内の専門図書館の関係者が港区立図書館のスタッフ向けに自館のプレゼンをする機会を頂きました。そこから交流が深まりました。

まずは関係者同士がお互いを知る、ということですね。

新屋そうです。同じ地域にある図書館同士でも、館種が違うと意識しなければ接点がありません。直接会って情報交換をすることで連携しようという雰囲気も高まっていったと思います。

そして昨年春から、みなと図書館で「連携企画展 専門図書館紹介」がスタートしました。公共図書館を頻繁に利用される方でも、専門図書館には行ったことが無い方がたくさんいます。みなと図書館の来館者に近隣の専門図書館を知ってもらうこの企画は、大変好評だったと聞いています。第1弾の三康図書館から回を重ね、4回で8つの専門図書館の紹介展示が実施されました。

港区立みなと図書館 連携企画展 専門図書館紹介
  • Vol.1 2023年4月21日~6月14日 三康図書館
  • Vol.2 2023年6月16日~8月16日 気象庁図書館・航空図書館
  • Vol.3 2023年8月18日~9月20日 アドミュージアム東京ライブラリー・食の文化ライブラリー・旅の図書館
  • Vol.4 2023年9月22日~10月31日 BICライブラリ・人権ライブラリー
(囲み内執筆者補足)

公共図書館は道沿いの案内看板や地図にも必ず掲載されているので多くの人の目に触れますが、専門図書館の場合、その分野の研究者などには知られていても近隣の人に知られていないとか、施設の存在を知っていてもその中に図書館があることを知らないといった例もあるので、こうして公共図書館の中でPRしてもらうのはとても良いアイデアですね。

新屋この展示がスタートした後、みなと図書館が改修のために長期休館することになったのをきっかけに、新しい連携企画の検討が始まりました。館内展示で「知ってもらう」から一歩進んで、今度はぜひ専門図書館に「足を運んでほしい」ということで、スタンプラリーという案が出ました。メーリングリストなどで色々話し合いながら、最終的にスタンプラリーとクイズとキーワードあつめを合体させた形になりました。

今回は、みなと図書館の利用者の方がいつもの図書館が利用できない間に近隣の施設に足を運んでもらうということが狙いでしたので、港区の中でも、ここ芝地区に限定して、図書館以外の類縁機関も含めて声をかけ、最終的にBICライブラリ、航空図書館、三康図書館、人権ライブラリー、東京都人権プラザ、みなと科学館、みなと図書館の7館で開催することになりました。

今回のスタンプラリーで初めてお邪魔した館もありますが、とても楽しく展示を拝見しました。このスタンプラリーがなければ訪れる機会はなかったかもしれません。良いきっかけを頂きました。

新屋会期はまだまだあるので、ぜひたくさんの人に参加して、まだ行ったことのない施設を訪れてみてほしいと思います。

みなと科学館を訪れた際、みなと図書館スタッフの方によるイベントが開催されていましたが、こうしたところにも皆さんの日頃のネットワークを感じることができました。これからも連携の環は広がっていくのでしょうか。

新屋まだ具体的には決まっていませんが、第2弾、第3弾と芝地区以外でも行えたらと思っています。館種や業界を越えた連携を続け、広げていくには、日頃からちょっとしたことでも連絡し合って話せる雰囲気を作っていくことが大事なので、地道に活動していきたいと思います。

「巡りぶ」の環が広がっていくのを楽しみにしています。

7館達成!

専門図書館や博物館というとその分野の資料だけがそろっていて、その分野に関わっていない人には敷居が高い場所という印象もあったのですが、今回訪問した館はどこも来館を歓迎してくださいましたし、館内の展示パネルや資料の説明など工夫されていて、その分野に詳しくない人でも興味を抱けそうだなと思いました。

今回のスタンプラリーで知らなかった図書館や博物館を訪問するきっかけをいただきました。ありがとうございました。

文/赤枝幸子 (株式会社ブレインテック Jcross担当)