レポート
図書館総合展サテライト会場めぐり リアル!修理系司書の集いに行ってきました
2023年の図書館総合展は、昨年に引き続きサテライト会場が用意されています。サテライト会場は実際に足を運んで展示等を見ることができる会場です。
11月4日(土)開催の「リアル!修理系司書の集い」のサテライト会場に、Jcrossの広報部長ウパっち[※1]と共に訪問してきました。会場は京都市営地下鉄烏丸線「くいな橋」駅から徒歩5分ほどでした。
図書館総合展のサイト内にリンクのある会場のHPに写真付きで駅からの道案内があったので、迷わずに到着できました。
1階では活版印刷と頁の破れの補修の体験ができました。まず最初に、テキンと呼ばれる手動式の活版印刷機で栞を作ることができる活版印刷を体験しました。印刷する紙は少し厚めの紙で、色は赤・白・黄色と3種類ありました。
選んだ黄色の紙を、マスキングテープが貼られている位置に置きます。
スタッフの方が紙の位置を確認してから、印刷を開始します。紙の反対側にある活字を紙に印刷するために、印刷機の取っ手を持ちながらスタッフの方からの声かけがあるまで上から押しました。上から押すため予想以上に力が必要でした。うまく印刷ができたのかと少し緊張しました。
できあがった栞の文字が印刷された部分を手で触ると、活版印刷ならではの凸凹がありました。今回は、活字や紙の位置を最初から準備してあったため、簡単に紙の真ん中に印刷ができました。どこに紙や活字を配置すれば目的の位置に印刷できるのかという体験もやってみたいと思い、活版印刷に興味を持ちました。
紙に穴を開けて、リボンを通すと栞の完成です。自分で印刷したものは持って帰ることができました。
2階に上がると、水濡れ資料の吸水体験と、昨年の図書館総合展のポスターセッションで展示した「資料保存の現場見える化アンケート」の全回答、今年実施した色々な状況にある資料について「修理する?しない?」と回答者に意見を求めたアンケート結果の展示がありました。部屋の中央にはお茶とお菓子があって参加者やスタッフの方が交流されていてにぎやかでした。
ここでは水濡れ資料の吸水処置を体験しました。時刻表を濡らしたものが用意されていて、上から手で押すとページの間から水が溢れてきました。見た目以上に水をたくさん吸っていたことが分かります。
今回の時刻表のように全体が濡れてしまった場合は、最初に乾いたタオルで押さえて水分をとります。少し押さえるだけでもタオルは濡れてしまいました。次に、キッチンペーパー等の吸水紙を挟みこみ水分を吸着させます。ページが開きそうな箇所に吸水紙を挟み、水分を取っていきます。紙は濡れていると破れやすいため、慎重にページをめくります。そして、上から押さえて水分を吸水紙に吸着させ、新しい吸水紙に取り替えながら紙の水分を抜いていきます。
この方法は時間と手間がかかってしまいます。冊数が多い場合は資料を扇形に開いて立て、半乾きの状態になるまで扇風機等で乾燥させる方法もあるそうです。
ドライヤーで乾かすことについて参加者から質問がありました。一気に熱を加えて乾かすと紙がたわむことがあるため、避けたほうがいいとのことでした。どのくらいの範囲が濡れたのかで補修方法は異なるそうです。
会場に東京都立図書館の資料保存のページを案内するQRコードがありました。こちらに、今回体験した水濡れ資料の取り扱いを含む、資料保存に関する情報が動画やテキストでくわしく掲載されています。
紫外線による紙の変化に関する展示もありました。新聞紙と付箋を日の当たるところ、引き出しの中、そして日の当たらない屋内にそれぞれ一定期間置いた結果の展示では、やはり日が当たるところにあった新聞紙は黄味がかった色に変化し、蛍光色の付箋は色が薄くなっていました。屋外ならば紫外線による影響はあるだろうなと思っていましたが、室内でも紫外線の影響を受けていることを知りました。
会場の中には雑貨を使用した展示がありました。中でも気になったのは窓の近くにあった腰までの高さの本棚です。紙や美術に関する本が並ぶ中で、食べ物の本の近くにカラフルなお鍋も一緒に展示されていました。他にどのようなものが展示されているのかなとかがみこんでじっくりと見てしまうかわいい本棚でした。
サテライト会場は補修体験をしている方や展示を見ている方、情報交換している方などさまざまな方々が集まっていました。子どもの教科書が濡れた時の対処法といった身近な質問や、子どもが自由研究で作った紙の作品を日の当たるところに置いておいた結果の展示などがあり、全体に親しみやすい雰囲気の会場で、初心者でも楽しく学ぶことができました。
ご案内いただいたスタッフの皆さん、どうもありがとうございました。
文/藤井夏美 (株式会社ブレインテック Jcross担当)
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